災害薬学ラボ

災害医療への玄関口

わが国の災害対応体制についてーどのような法律があるのか?

 

 日本は、世界的に見ても災害の多い国である。そのため、災害対策のレベルは世界的に誇れるものである。そこでここからは、わが国の災害対応体制についてまとめる。

 

 今回は災害対策に関する法律の体系についてみていく。

 

 

災害に関する法体系

国会議事堂のイラスト

 災害に関する法体系は 災害対策基本法、②災害関連法令 の二種類の法律による。災害対策の法令は、②災害関連法令によって個別的な事項が定められていれば、まずはそれが適用され、特別の定めがない場合には①災害対策基本法が適用される。

    災害対策基本法:災害対策全般のことを定めた一般法

     ②災害関連法令:災害救助法、被災者生活再建支援法といった個別的な事項の対応を定めた特別法

 

災害対策基本法

 災害対策基本法は、わが国の国土ならびに国民の生命、身体および財産を災害から保護し、もって、社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的として、災害対策の基本となる事項を定めたものである。1959年の伊勢湾台風(死者・行方不明者5,098人)を契機として1961年に制定された。

 法の内容は以下の通り。

 

防災に関する責務の明確化

 国、都道府県、市町村及び指定公共機関:防災に関する計画を作成し実施する責務。

                    相互に協力する責務など。

 住民:自発的に防災活動へ参加するよう努力する責務など。

 

防災に関する組織

 国に中央防災会議を、都道府県に都道府県防災会議を、市町村に市町村防災会議をそれぞれ設置する。

 災害の発生やその恐れのある場合には、地域防災計画に定めるところにより都道府県または市町村に災害対策本部を設置する。災害の規模によっては、国においても、非常(もしくは緊急)災害対策本部を設置する。

 非常(緊急対策本部)の長(国務大臣または内閣総理大臣)は、各機関の長に必要な指示をすることができる。

 

計画的防災行政の整備

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防災計画について-内閣防災担当http://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/...arikata/.../shiryo2.pdf

 

災害対策の推進

  災害対策を災害予防災害応急対策および災害復旧という各段階に分け、それぞれの段階ごとに各実施責任主体の果たすべき役割や権限を規定している。

⑴災害予防

  • 防災組織の整備
  • 防災訓練の実施
  • 防災施設の整備
  • 物資・資材の備蓄

⑵災害応急対策

  • 消防、水防団、警察などの出動命令
  • 被害状況の報告
  • 避難指示・勧告
  • 警戒区域の設定、立ち入りの制限・禁止、退去命令
  • 応急公用負担(土地、建物等の一時使用、住民・現場にある者への従事命令)
  • 医療、土木建築工事、輸送関係者への従事命令
  • 交通規制 など

⑶災害復旧

 

防災予防等に要する費用負担

 災害予防および災害応急対策に関する費用は、その実施責任者が負担する。しかし著しく激甚である災害(激甚災害)は、地方公共団体に対する助成等を行うこととしている。

 

 

災害関連法令(災害救助法)

 災害救助法は、災害に対して、国が地方公共団体日本赤十字社などの団体と国民の協力のもとに、応急的に必要な救助を行い、被災された方の保護と社会の秩序を守ることを目的とした法律である。(災害関連法令の中でもDMAT活動に密接な関わりのある災害救助法を取り上げる)

 法の内容は以下の通り。

 

災害救助法における「救助」とは

 本法において救助とは、災害時に食べ物やその他の生活必需品の欠乏、家の倒壊、ケガなどにより助けを必要とする被災者に対する応急的、一時的な救助を指す

 都道府県知事が救助の実施にあたり、市町村長がこれを補う。

 

救助に関する都道府県の義務

 都道府県知事は常に防災に努めなければならない。

 

救助の種類

 この法律における救助には次の通り。

  • 避難所、応急仮設住宅等の収容施設の設置
  • 食品、飲料水の供給
  • 被服、寝具やその他の生活必需品の給与
  • 医療、助産
  • 被災者の救出
  • 住宅の応急修理
  • 生業に必要な資金、器具などの給与
  • 学用品の給与
  • 埋葬

 

物資の保管命令、収容、立ち入り検査 

 指定行政機関(内閣府厚生労働省等)の長及び指定地方行政機関の長は防災業務計画に従い、救助に必要な物資の生産、販売、輸送等を行うものに対し物質の保管を命じ、または物資を収容することができる。または、物資を保管する場所に立ち入ることもできる。

 

救助業務従事の指示

 都道府県知事は、医療、土木建築工事、輸送関係者等を救助に関する業務に従事させることができる。その場合、実費を弁償しなければならない。またこれにより負傷した場合、扶助金を支給しなければならない。

 

応援指示

 内閣総理大臣は、都道府県知事行う救助について、他の都道府県知事に対して応援をするよう指示することができる。

 

日本赤十字社の救助への協力義務

 日本赤十字社は、その使命に則り救助に協力しなければならず、都道府県知事は救助またはその応援の実施に関して必要な事項を日本赤十字社に委託することができる。

 

費用の負担

 救助に関する費用は、救助の行われた地の都道府県がこれを負担する。他の都道府県が応援をした場合の費用については、その都道府県が救助の行われた都道府県に対して、請求することができる。

 

国庫負担

 国は、都道府県が救助に要した費用の一部を負担することになっている。救助に要した費用の都道府県の税収との割合に応じて負担する額が異なってくる。

 

災害救助基金の積み立て

 都道府県は救助に必要となる費用の財源に充てるため、災害救助基金を積み立てなければならない。

 

 

【参考文献】DMAT標準テキスト

DMAT標準テキスト

DMAT標準テキスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

災害時における薬剤師の支援活動

 阪神淡路大震災新潟中越地震に続き2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。

 

 地震の規模を示すマグニチュードはMw9.0で、日本の観測史上最大規模の地震であり、1995年の兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)、2004年の新潟県中越地震以来、観測史上3回目の最大震度7を観測しました。この地震とそれに伴う津波、およびその後の余震は東北から関東にかけての東日本一帯に甚大な被害をもたらし、数多くの医療チームが被災者の救援に駆けつけました。

災害医療特殊部隊のイラスト

 

  しかし、その医療チームに薬剤師がいたことは世間ではあまり知られておりません。実際、東日本大震災において薬剤師は医療チームの要となり、「おむつと、、、薬剤師が足りません」と、全国放送で流されたほど活躍しておりました。

 

 そこで今回は、東日本大震災における薬剤師の支援活動を紹介します。

医薬品集積所における医薬品等の仕分け(薬効別分類)、出入管理、品質管理、避難所・救護所からの要望に応じた医薬品の供給
医療救護所や仮設診療所などにおける調剤及び服薬指導
医薬品使用に関する医師や看護師への情報提供
  • 医療救護所の限られた医薬品で最良の処方・治療ができるよう、医療救護所内の医薬品の在庫を把握し、医師に対し使用できる同種同効薬の選択・提案などを行った(処方支援)。看護師等にも在庫医薬品に関する情報を提供した。
使用薬等の聞き取り、医薬品の鑑別・特定、お薬手帳の活用に取り組んだ。
  • 医療救護所での診察前に、被災者から平時に使用している慢性疾患使用薬を聞き取り、医薬品の鑑別・特定を行い、お薬手帳へ医薬品名等を記載した。過去の薬剤服用歴がないことから、アレルギー歴・副作用歴等についても確認し、お薬手帳に記載した。
  • 医療救護所で調剤・交付した薬剤名等をアレルギー歴・副作用歴と共にお薬手帳に記載し、他の医療機関で診察を受ける際には、お薬手帳を提示するように勧めた。
医療救護所の設置されていない避難所への巡回診察に同行した。
避難所における一般用医薬品の保管・管理及び被災者への供給を実施した。
  • 一般用医薬品で対応が可能と考えられる被災者に対しては、医療チームの連携の下で薬剤師が症状等を聞き、適切な一般用医薬品を供給した。一方、一般用医薬品では対応が難しいと考えられる被災者に対しては受診を促した(薬事トリアージ)。
  • 避難所生活の長期化の影響に伴う栄養バランスの悪化に対し、総合ビタミン剤等の供給を行った。
避難所における医薬品や健康に関する相談活動を実施した。
公衆衛生活動(避難所における衛生管理および防疫対策への協力)に取り組んだ。
  • 感染症対策:梅雨シーズンおよび夏期におけるノロウイルスサルモネラ菌、病原性大腸菌等の感染対策として、また、冬期におけるインフルエンザ対策として、仮設トイレやドアの把手等の消毒を薬剤師会として行った。また、「手洗いやうがいの励行」「手指消毒」「塩素系漂白剤での靴裏の消毒」等の呼びかけを薬剤師会として行った。
  • 害虫駆除:夏場に大量発生するハエや蚊などの害虫対策として、被害の大きい地区の避難所に殺虫剤および簡易噴霧器を配布するとともに、仮設トイレやごみ置き場で殺虫剤の散布方法の説明を薬剤師会として行った。

 

【参考文献】

『DMAT標準テキスト 日本集団災害医学会 (著)』

ドキュメント東日本大震災 そのとき薬剤師は医療チームの要になった (日経DIブックス1) 日経ドラッグインフォメーション 東日本大震災取材班 (著)

災害時の薬学生の支援活動とは

 南海トラフ地震が近いうちに起こると言われている現在、災害が起きた時に薬学生として自分も何かしたいと思っている人は少なくないのではないでしょうか。

 

 そこで今回は、2011年3月11日に起きた東日本大震災における薬学生の支援活動をまとめるので、今後自分が支援活動をするにあたっての準備や心構えの参考にして欲しい。

 

 支援活動を行った学年とその人数

 

6年生・・・2人

5年生・・・4人

4年生・・・10人

3年生・・・4人

2年生・・・2人

1年生・・・0人

 

 活動時期

亜急性期もしくは慢性期

 

 参加した動機

  • 知人の紹介
  • 研究室経由の連絡
  • 知人の薬剤師あるいは薬剤師会に参加できるように頼んだ
  • 自分で開始
  • インターネット検索により医療チームを見つけて頼んだ
  • 実務実習中の指導薬剤師の紹介

 

 事前に準備した物資

動きやすい服装、マスク、軍手、寝袋、食料、水、長靴、消毒薬、絆創膏、常備薬。

高学年の学生は、医薬品情報を得るための書籍も併せて持参していた。

 

 活動形態

  • 医療支援チームに帯同して活動を行う(延べ12人)
  • 医療者がコーディネーターとなり活動を行う(延べ12人)
  • 学生が個人で支援活動を行う(延べ11人)

 

 支援活動内容

 亜急性期(低学年)
  • 医薬品の仕分け、運搬、管理
  • 公衆衛生活動
  • 医師、看護師の往診の補助(薬剤師不在の場合)
  • 被災者のニーズ調査、避難所情報の収集、整理
  • OTC薬、サプリメント、衛生用品の仕分け、配布
  • 医薬品、医療用具の運搬
  • 支援医療者の調整業務、ドライバー
  • 医歯薬3学部合同での医療系ガイドブック作成、広報
亜急性期(高学年)
  • 医薬品の分類、管理
  • 医療用具の仕分け、管理
  • 医師、看護師の往診の補助(薬剤師不在の場合)
  • 薬剤師の調剤関連の補助
  • 被災者の健康相談
  • OTC薬、サプリメント、衛生用品の仕分け、配布
  • 支援医療者と共に必要な医薬品を運搬
  • 支援活動を終了した医療者からの情報収集、支援活動を開始する医療者への情報提供
  • 被災者のニーズ調査
  • 医療系ガイドブック作成
慢性期
  • 衛生用品の管理
  • 運動支援ボランティア
  • 傾聴
  • 子供の遊び相手
  • OTC薬の相談及び配布の補助
  • マスクの配布
  • 公衆衛生活動:殺虫剤の作り方の指導、散布
  • 被災者のニーズ調査、避難所情報の収集、整理
  • 栄養ドリンク、衛生用品、消毒剤の分類
  • 医薬品、OTC薬の分類
  • 医歯薬3学部合同での医療系ガイドブック作成、広報

 

【参考文献】

東日本大震災における薬学生の支援活動 南絢子 水野智博 宮川泰宏 著

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsp/34/2/34_97/_pdf

 

災害における心理学

 災害心理学でよく耳にするのは『正常性バイアス』ですが、今回は『10-80-10理論』、『プロスペクト理論』について主に触れようと思います。

正常性バイアス

 

 まず正常性バイアスについて簡単に、、、正常性バイアスとは、社会心理学災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のことです。自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となります。

韓国地下鉄火災事件

 

 この心理がよく表れた事件に、韓国地下鉄火災事件があります。2003年に韓国で起こった火災事件で、192人が死亡した事件です。第1079列車に乗っていた自殺志願者が、列車が地下鉄のホームに入った時にガソリンを撒いて火を放ったことによる火災ですが、この事件の特徴は、死亡した192人の内142人が出火元の第1079列車ではなく、対向線路にあった第1080列車に乗っていたという事です。

 第1079列車に乗っていた乗客は状況が把握できたためすぐに避難することが出来ましたが、第1080列車に乗っていた乗客は何が起こったか分からず、また地下鉄の指令センターも火災警報器が誤作動したと思い込んだため避難命令も出しませんでした。

 人はどうして良いか分からない時、ほかの人と同じ行動を取ることで乗り越えてきた経験、つまり迷ったときは周囲の人の動きを探りながら同じ行動をとることが安全と考える「多数派同調バイアス」の呪縛に、心が支配されてしまいます。

 事件発生時、乗客はこうした心理に陥り、同じ境遇に陥った乗客同士が相互にけん制し合い、相互間に同調性バイアスが働いたものと考えられます。加えて、こんなことは起こるはずのない信じられない出来ごとと捉え、これは訓練なのではないか、今は異常ではなく「まだ正常なのではないか」という心理(正常性バイアス)が働き、逃げるという行動に移せませんでした。とくに事態が緩慢に展開していく場合、まだ大丈夫、まだ正常の範囲と期待する本能も作用するともいわれています。

 このような心理が働いたため、第1080列車の乗客の方が多く死亡してしまいました。これは災害時にも起こりうることです。

10-80-10理論

 10-80-10理論とは、災害発生時、10%は直ちに行動を起こすことができ、10%はパニック状態に陥り、80%は恐怖、唖然、当惑、フリーズする(凍りつく)というものです。

プロスペクト理論

 プロスペクト理論とは、人は利益を得る場面では確実性を好み、損失する場面では曖昧さを好むという考え方です。これは防災の面で当てはまります。災害のように損失するのが分かっている事象の起こる確率は低く見積もるため、それに対して多くの投資をするということは費用便益にあわないと考えて結局何の行動もしないという事になるわけです。行政が災害に対して消極的なのは(地域によりますが・・・)これが理由です。また多くの人が、地震により建物倒壊に不安を感じているが、特に何もしていないというのもこれを裏付けます。

 

 

 

災害医療とは

 災害医療とは、救急医療とは違う。救急医療は一人の傷病者に対して十分な人員、医薬品を投入できるが、災害時は、多数の傷病者に対して限られた資源しか投じることができない。つまり、災害時には、医療における需要と供給のバランスが崩れる。そのため、救急時には必要のないトリアージという概念が必要となる。

 

 災害医療は三つのフェイズに分類される。

 ①発災直後(超急性期)

 ②数日後から一か月後

 ③一か月以降

 

 ①:平時なら救命できる重症患者の救命を最優先課題。DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害時派遣医療チーム)が活動。OTC薬で対応できる患者さんには薬剤師が判断して対応することも大事(薬事トリアージ)。危険な症状とそうでない症状を見分ける必要がある。参考書としては『内科救急実況Live―講義で学ぶ診療のコツー岩田 充永(著)』や、『Dr.林&Ph.堀の危ない症候を見分ける臨床判断  林 寛之 (著), 堀 美智子 (著) 』等がある。

神津仁の名論卓説|熊本地震と災害医療派遣|e-doctor

 薬剤師としてこの超急性期に必要な事は、緊急時に用いる薬剤に精通すること、麻薬などの取り扱いと持ち出しに精通することが必要。

 

 ②:このフェイズでは、JMAT(Japan Medical Association Team:日本医師会災害医療チーム)がDMATと入れ替わりで活動。普段の治療を中断しないこと、避難時の生活習慣に注意することが大事。

 

 ③:このフェイズは復興が本格的な時期で、特に地域の繋がりに注意する。例えば、訪問診療時に虐待のリスクや孤立するリスクがないかを考える。

 

 災害時は特殊な状況なので、いつも通り他人を思いやって行動することが難しい。なのでそんな時こそ、相手が一番大事にしていることは何かを考えて、ときには相手を許すことで理解できることも増えてくる。また、災害医療は小さなことの積み重ねで。大きなことを自分が成し遂げようとしてしまうことはあってはならない。仕事を選ぶ等は論外である。同じ災害は二度と起こらない。災害医療は、災害に応じて変化するため、過去の事例から謙虚に学び備えることが大事である。

 

災害とは

 そもそも災害とは、自然現象や人為的な原因により人命社会生活に影響が出る状態のことです。日本の災害対策基本法では、災害を「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」と定義しています。

 

 災害の要因は大きく分けて、誘因素因の二つがあります。地震や洪水のような外力を誘因、社会が持つ災害への脆弱性(裏を返せば防災力)のことを素因といい、災害は防災力(素因)を超える外力(誘因)に見舞われたときに生じるといえます。

 

 災害の定義としては、①社会学的定義と②安全工学的定義の二種類があります。

 

社会学的定義

 社会学定義に基づく災害には、自然災害と人為的災害があります。自然災害には、気象災害、地震、噴火があり、人為的災害には、列車、航空、海難、交通事故、テロ、NBC災害(N=nuclear,B=biological,C=chemical)、CBRNE(R=radiological,E=explosive)災害があります。

②安全工学的定義

 安全工学的定義では、日常災害や労働災害を含めた広範な事象を災害として取り扱います。転倒、火傷、医療事故等も災害に含まれます。

 

被害の大きな自然災害としては以下のようなものがあります。

  • 中国大洪水(1931年7月-11月)

 Bundesarchiv Bild 102-12231, China, Überschwemmungsopfer.jpg

 死者14万5,000人–400万人、20世紀以降の洪水災害として最大。20世紀最悪の自然災害として確実。1928年から1930年まで、中国では長期の干ばつに見舞われました。いくつかの記録によれば、華中では1930年末の冬から異常気象となり、激しい冬の嵐ののち、春の雪解けと豪雨によって川の水位が大幅に上昇しました。1931年7月・8月には雨はさらに勢いを増し、1931年はまた、台風の活動が極めて活発だった年でもあり、年平均わずか2個の台風しか発生しないこの地域に、この年の7月だけで7個の台風が襲来し、7月だけで長江沿いの4つの気象台が月間降水量600mm以上を記録しました。長江と淮河の洪水は、まもなく当時の中国の首都・南京に到達し、水死あるいはコレラやチフスといった水媒介性感染症で数百万人が死亡しました。

  • ボーラ・サイクロン(1970年11月7日~11月13日)

 ボーラ・サイクロン 1970年11月11日 0858 UTC  

 死者30万–50万人、サイクロン災害として史上最悪。1970年11月12日に東パキスタンのボーラ地方(今日のバングラデシュ)とインドの西ベンガル州を襲ったサイクロン。ベンガル・デルタ地帯の標高が低い島々が高潮に襲われ、これを主な原因としてもっとも控えめな見積でも20万5000人以上、最大50万人と推定される人命が失われました。近代以降の自然災害全般の中でも最悪のものの一つ。この被害が余りに激甚であったことが直接的な契機の一つとなって、以後パキスタンは内戦状態に陥り、翌年バングラデシュが独立しました。ハリケーンの規模は最低中心気圧966mb、最大風速51m/sに達した。これはサファ・シンプソン・ハリケーン・スケールにおけるカテゴリー3ハリケーンに該当します。

  • 唐山地震(1976年7月28日)

 

死者242,000–655,000人、20世紀以降の地震災害として最大中華人民共和国河北省唐山市付近を震源として発生したマグニチュードMw7.5の直下型地。市街地を北北東から南南西に走る断層に沿って大きな水平右ずれが発生し、当時有数の工業都市であった唐山市は壊滅状態となりました。死者数は中国発表で約25万、アメリカの地質調査所の推計では65.5万人となっています。当時中国は文化大革命の真っ只中であり、政府は「自力で立ち直る」と外国からの援助を拒否しました。このことが犠牲者の拡大をもたらした一因だといわれています。

スマトラ島沖地震(2004年2月26日)

  

 死者226,566人、津波災害として観測史上最悪。インドネシア西部時間07時58分53秒にインドネシア西部、スマトラ北西沖のインド洋で発生したマグニチュード9.1の地震に伴う津波である。マグニチュード9.1とは、東北地方太平洋沖地震(M9.0)の1.4倍の規模であり、1900年以降チリ地震に次いで二番目に大きな規模である。平均で高さ10mに達する津波が数回、インド洋沿岸に押し寄せました(地形によっては34mに達した場所もあった)。アンダマン・ニコバル諸島近海からスマトラ島北西部近海にかけてのおよそ1,500kmの帯状の地域(上のアニメーション参照)の、およそ海底4,000mの場所で津波が発生、津波発生時には2~3mほど海底が持ち上がり、ジェット機並みのスピード(約700km/h)で津波が押し寄せたと見られます。 

 津波はアフリカ大陸東岸のソマリア、ケニア、タンザニアにも到達し、ソマリアで100人以上の死者が発生。また南極大陸昭和基地でも半日後に73cmの津波を観測し、また、アメリカ合衆国の西海岸、南アメリカ大陸でも数十cmの津波を記録した。

  • プレー山噴火(1902年5月8日)

 

 死者約30,000人、20世紀以降の火山災害として最大。プレー山(仏: Montagne Pelée)は、西インド諸島のなかのウィンドワード諸島に属するマルティニーク島にある活火山。名称は『はげ山』の意味。1902年に大噴火を起こし、当時の県庁所在地だったサン・ピエールを全滅させた。その結果、約30,000人が死亡。プレー山の噴火そのものは特筆するような大規模なものではなく、たまたまサン・ピエールの町が熱雲の通り道にあった事が大災害の直接の原因でした。しかし一方で人災の面も指摘されます。5月に実施予定の選挙のため、市民が市から退避するのを防ごうと、市の首脳部や新聞社はプレー山の活動を過小評価し、あるいは無視して、差し迫った危険を市民に知らせませんでした。災害の直前には市長は市に戻って安全を強調すると共に、軍隊により住民の退去を強制的に阻止しました。しかし、島の地形がサン・ピエール市を災害から守るようになっていると信じて郊外から市内に移った人々もいました(実際、火砕流の本体は谷に沿って流れ、サン・ピエールを外れている)。

  • バルガス災害(1999年12月15日)

 死者10,000 - 50,000人、地滑り災害として史上最大

  • イラン吹雪災害(1972年2月)

 死者4,000人、吹雪災害として観測史上最悪

  • Daulatpur–Saturia竜巻(1989年)

 死者約1,300人、竜巻災害として観測史上最大

PhDLSとは

           「PhDLS」の画像検索結果

 災害薬事研修コース(Pharmacy Disaster Life Support ; PhDLS)を指します。

概要 

 2015年度に日本集団災害医学会が立ち上げた研修コースで、現在、日本集団災害医学会PhDLS運営委員会が運営を担当し、災害医療の基本や災害薬事にについて学ぶ機会として、日本各地で開催されています。

対象

  対象は薬剤師のみならず看護師、行政関係者、学生等多岐にわたります。

コース 

 プロバイダーコース・・・すべての職種が対象で学生も可。

 インストラクターコース・・・災害薬事研修プロバイダーコース修了者で、意欲があり、各地域単位で災害薬事研修コースを実施するインストラクターとなりうる者が対象。

開催日時

 PhDLSのFacebookを参照してください。

 https://www.facebook.com/groups/PhDLS/

受講料

 開催地によってまちまち。

コースの内容(プロバイダーコース)

 朝から夕方まで講義(我が国の災害医療体制や、CSCATTT、PHARMACISTなどの災害時特有の言語について、フィジカルアセスメントの仕方についてなど)と、実際に発災したことを想定したグループディスカッションや机上シミュレーション、薬事トリアージの実技等を行った後、一日の講義のまとめとして試験(筆記試験と実技試験)が行われます。受かれば修了証がもらえ、晴れてプロバイダーになれます。

(自分が参加した会では全員一発合格でしたが、中には再試験になる人もいるそうです)

受講理由

 災害医療に関心があり参加する方もいらっしゃいますが、災害医療認定薬剤師の認定基準の1つにもなっているためそれを視野に入れて参加する方もいます。

 2016年1月6日に公示された、災害医療認定認定薬剤師の認定に必要な事項の一つににPhDLSの世話人、またはインストラクターであることが示されています。

災害医療認定薬剤師認定に関する公示

 

 説明はこんなところにして、参加した感想としては同じグループの方とのディスカッションや薬事トリアージの実技はとても楽しかったです!講義内容も災害医療に興味のある方ならば楽しいと思います!是非参加してみてください!

 自分は、学部二年生の時に参加したので、不安でいっぱいだったのですが全然ついていけましたし、災害医療に携わっている方たちとも知り合うことができてとても充実した時間を過ごせました。

 薬事トリアージの実技の時に、糖尿病性ケトアシドーシスの模擬患者さんがやってきて、その時は糖尿病である事しかわからなくて、十分な対応が出来なくて悔しかったのですが、後日、大学の生化演習の授業で糖尿病性アシドーシスの内容を勉強したときは感動しました。日々の勉強の大切さを実感するという意外な収穫もあり、学生が参加することのメリットも多いと思います。