災害薬学ラボ

薬剤師×災害×医療

災害薬事支援の原則-CSCAPPPとは-

ここでは、災害支援活動について薬事関連に重点を置いて説明します。

 

CSCAPPPとは

災害支援における原則は、以下のページに書いてある通りで、医療支援を行う前にはCSCAを確立することが重要です。 

 

 災害医療の原則、CSCATTTとは - 災害薬学ラボ

ここまでは、全ての医療従事者に共通しますが、ここからが少しだけ異なります。

通常ならCSCAを確立した後は、TTT(Medical support)を行いますが、薬事支援に携わる人は特にTTTの部分をPPP(P:pharmaceutical triage, P:preparation, P:provide medicines)として置き換えて考えることが出来ます。

自分達の職能をしっかり理解し発揮することが、効果的な災害医療支援につながります。

 

①P:pharmaceutical triage【災害薬事トリアージ


災害薬事トリアージには
・人へのトリアージ
・医薬品のトリアージ
の2種類があります。

 

人へのトリアージ

 

人へのトリアージは、限られた薬剤でより多くの人を救うにはどの患者になんの薬を提供するのが良いか選別することです。

ここで、疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれません。
処方せん医薬品は医師からの処方せんがないと販売できないから、薬剤師がどの薬を患者に提供すればよいか判断する必要はないのではないか。
確かに通常時はそうなんです。

 

薬事法には、
医薬品の販売業者(薬剤師等)は、医師等からの処方せんを受けた患者以外の者に対して、正当な理由なく、処方せん医薬品を販売してはならない。
ここで、正当な理由として該当するのが以下の事項です。
① 大規模災害時等において、医師等の受診が困難な場合、又は医師等からの処方箋の交付が困難な場合に、患者(現に患者の看護に当たっている者を含む。)に対し、必要な処方箋医薬品を販売する場合

 

簡単に理解できるように改変してあるので興味のある方は、以下のページで読んでみてください。

平成23年東北地方太平洋沖地震における処方箋医薬品の取扱いについて(医療機関及び薬局への周知依頼) |緊急情報|厚生労働省

 

つまり、災害時においては薬剤師の判断で患者さんに処方せん医薬品を提供しなければならないケースがあるということです。

そうでなくても、医師から処方せんを受け取った時に、自分の意見をしっかり言える薬剤師の方がいいですよね!

 

医薬品のトリアージ

 

医薬品のトリアージとしては、緊急に必要な薬剤の選別や備蓄、支援薬剤の選別等が含まれます。

 

②P:preparation【準備】


場所の確保、人員の確保、医薬品、調剤機器の確保などをし、処方支援、処方せん発行支援、在庫医薬品のリスト化を行うことが求められます。
さらに環境を整えた後に、調剤時には調剤上の工夫、患者情報収集、服薬管理状況を把握することも求められます。
モバイルファーマシーの導入により、調剤環境や医薬品供給の流れが大きく変わろうとしています。

 

③P:provide medicines【医薬品供給・調剤】


災害時には、平時には供給しないような新しいところへ医薬品を供給しなければなりません。
供給体制をしっかりと確立することが、医療支援活動が成功するかどうかの大事なカギとなります。
医薬品を供給すべきところとしては、
災害拠点病院
・災害支援病院
・一般病院
保険薬局
・避難所
・救護所
・医療チーム
などです。
一口に供給といっても、使用できる医薬品の在庫量の一覧表の作成、医薬品の種類・量・優先順位の決定、発注先・発注方法の確保、保管・管理体制の構築、輸送方法の確保などの、ロジスティクス的な業務が求められます。

 

【参考文献】

 

災害薬事標準テキスト

災害薬事標準テキスト