災害薬学ラボ

薬剤師×災害×医療

災害医療の原則-CSCATTTとは

英国の標準的教育プログラムMIMMSによると、いずれの災害に対するアプローチも単一のコンセプトによって行うことができるとされている。

このコンセプトこそがCSCATTTである。
これは、発災直後にとるべき行動のそれぞれのアルファベットの頭文字をとって並べたものであり、災害医療に携わる者なら誰しも知っておくべき用語で、発災直後の行動の基盤となる考え方である。

 

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MMAT研修交流集会に150人 「災害対策本部」とは―― 設置や運営を学ぶ – 全日本民医連


CSCAをメディカル・マネジメント(医療管理)、TTTをメディカル・サポート(医療支援)と呼ぶ。

 

 

メディカル・マネジメント

 

①C:Command&Control【指揮、統制】

災害医療では、組織的に無駄なく混乱なく活動することが求められる。
そのためには、各機関内でのタテの指揮命令系統(Command)と関係各機関の各レベルでのヨコの連携(Control)の確立が必要である。 


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②S:Safety【安全】

活動において安全は第一優先されることは言うまでもない。
安全の3Sを意識することが必要とされる。

 
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地震・津波・液状化と院内災害対応

 

③C:Communication【情報伝達】

災害時対応で失敗する原因でもっとも多いものは情報伝達の不備である。
情報伝達がままならないと、本部から末端への命令が伝わらず、指揮命令系統の確立や他機関との連携は困難となる。
情報伝達の障害の原因としては
①情報基盤の障害・・・停電や断線により、電話やインターネットがダウンしたり、回線がパンクしたりして、携帯電話の使用が困難になる。
②情報伝達機器の取り扱い方法の習熟不足・・・衛生電話やトランシーバーの使い方が分からない。
③不適切な通信方法・・・復唱の欠如、専門用語や略語を使用することにより、正確な意志疎通が取れない。
などがある。

 

④A:Assessment【評価】

集められた情報を分析し、精査することによって活動方針を立てる一連の活動。

 

メディカル・サポート

 

①T:Triage【トリアージ

災害時は医療資源が限られるので、最大多数の傷病者に最善の医療を提供するために限られた人的・物的資源を最大限に活用し、傷病の緊急度や重症度を迅速に評価し、治療や搬送の優先順位を決定する。
これをトリアージと呼ぶ。


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災害訓練の必要性 | ナース大学公式ブログ

 

②T:Treatment【治療】

災害時の治療には、安定化治療(処置)と根本治療に大別される。
安定化治療はA(気道)、B(呼吸)、C(循環)の確保。
根本治療は、手術など設備の整った病院で行える治療。
できるだけ早期に根本治療を行うことが救命の鍵であるが、災害時に被災地内の病院で根本治療をすることが困難で搬送にも時間がかかるため、安定化治療を行いつつ搬送する必要がある。 

 

③T:Transport【搬送】

災害時は適切な搬送が生死を分ける。
適切な搬送のためには
①搬送される患者の情報
②搬送手段の情報
③搬送先の情報
④搬送中の医療の提供の情報
の調整が必要。
搬送中も医療の継続が不可欠である。


CSCAが確立してからTTTを行うことが標準的である。

 

 

災害薬事標準テキスト

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