災害薬学ラボ

薬剤師×災害×医療

災害医療とは

 災害医療とは、救急医療とは違う。救急医療は一人の傷病者に対して十分な人員、医薬品を投入できるが、災害時は、多数の傷病者に対して限られた資源しか投じることができない。つまり、災害時には、医療における需要と供給のバランスが崩れる。そのため、救急時には必要のないトリアージという概念が必要となる。

 

 災害医療は三つのフェイズに分類される。

 ①発災直後(超急性期)

 ②数日後から一か月後

 ③一か月以降

 

 ①:平時なら救命できる重症患者の救命を最優先課題。DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害時派遣医療チーム)が活動。OTC薬で対応できる患者さんには薬剤師が判断して対応することも大事(薬事トリアージ)。危険な症状とそうでない症状を見分ける必要がある。参考書としては『内科救急実況Live―講義で学ぶ診療のコツー岩田 充永(著)』や、『Dr.林&Ph.堀の危ない症候を見分ける臨床判断  林 寛之 (著), 堀 美智子 (著) 』等がある。

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 薬剤師としてこの超急性期に必要な事は、緊急時に用いる薬剤に精通すること、麻薬などの取り扱いと持ち出しに精通することが必要。

 

 ②:このフェイズでは、JMAT(Japan Medical Association Team:日本医師会災害医療チーム)がDMATと入れ替わりで活動。普段の治療を中断しないこと、避難時の生活習慣に注意することが大事。

 

 ③:このフェイズは復興が本格的な時期で、特に地域の繋がりに注意する。例えば、訪問診療時に虐待のリスクや孤立するリスクがないかを考える。

 

 災害時は特殊な状況なので、いつも通り他人を思いやって行動することが難しい。なのでそんな時こそ、相手が一番大事にしていることは何かを考えて、ときには相手を許すことで理解できることも増えてくる。また、災害医療は小さなことの積み重ねで。大きなことを自分が成し遂げようとしてしまうことはあってはならない。仕事を選ぶ等は論外である。同じ災害は二度と起こらない。災害医療は、災害に応じて変化するため、過去の事例から謙虚に学び備えることが大事である。